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第一白川橋りょう復旧工事
第一白川橋りょう
熊本地震により被害を受けた、地域で愛されてきたアーチ橋を再生。
景観を維持しながら最新の安全性を実現しています。
OVERVIEW
昭和2年に架橋された第一白川橋りょうは、選奨土木遺産にも選定され、絶景を彩るアーチが観光客や地元の方に親しまれていましたが、平成28年の熊本地震により、橋りょうの移動・変形等の甚大な被害を受け、架け替えを余儀なくされました。損傷した旧橋を撤去し、下部工(橋台・橋脚)の損傷個所を補強。旧橋の形式・支間割を踏襲して、旧橋の見た目に極力類似させた新橋の架橋が進められました。
KEY POINT
第一白川橋りょうとは
阿蘇カルデラを囲む外輪山の一角が切れ、白川が深い峡谷を形成して流れ出す場所に架橋されたアーチ橋です。南阿蘇鉄道の絶景ポイントとして、昭和2年の竣工以来親しまれてきました。構造は2ヒンジスパンドレル・ブレースト・バランストアーチとされ、国内でも数少ない橋りょう形式です。川からレール画面までの高さは約300mで、完成当時、鉄道省(国鉄)で最も高さを持つ鉄道橋でした。

KEY POINT
ケーブルエレクション直吊り工法
施工箇所が谷間などで作業構台の構築が不可能な場合に、橋りょうの運搬のためのケーブルクレーンと、橋りょうを支えるためのケーブルエレクション直吊設備を設置する工法です。ケーブルクレーンは、旧橋りょうを撤去・運搬した後、新しい橋りょうの架設にも継続して使用されました。工事の進捗度合により、橋の挙動が変化するため、リアルタイムでの計測・解析が必須であり、高度な技術が求められる工法です。


プロジェクトのキーマン
現場代理人M
このプロジェクトに
かけた想い
地元の期待を背負った復旧事業
第一白川橋りょうは、昭和2年に建設された橋梁で、平成27年に選奨土木遺産に選出されましたが、翌年の熊本地震により供用不可能となり、撤去・架け替えを余儀なくされました。本工事に携わるにあたり、橋梁及び下部工の損傷状態を確認し、難工事であることを認識しましたが、南阿蘇鉄道様の復旧に対する熱意と、地元の方々からの期待を受け、橋梁技術者として「何としても復旧させよう」という気持ちが高まりました。

当時の苦労
地形に起因する制限に立ち向かう
本橋の終点側はトンネル坑口からすぐに橋梁となっており、作業構台の構築が困難でした。重機や資機材の搬出入は軌陸車の使用が不可欠であり、寸法や重量などの制限がありました。新設橋の架設では、ケーブルエレクション直吊工法の特性上、ステップ毎に支持点の高さが変動する中、中央径間で-6~+12mm、側径間で-4~+7mmという規格に合わせることが困難でしたが、直吊索の張力・鉛直材応力・橋体高さを一元管理できるシステムを構築することで厳しい規格内に収めることができました。

完成を迎えて
これまでで最も印象に残った工事
当初の不安が大きかった分、工事が無事完了したことへの達成感も大きく、今まで携わった工事の中で一番印象に残った工事となりました。令和5年7月15日に全線開通となり、メディア等で取り上げられることが多く、地元住民のみならず、観光客の方にも喜ばれている所を見ると感無量です。未だ全線復旧後の橋梁を見ていませんが、今後は時間を作り、家族を連れて南阿蘇鉄道のトロッコ列車に乗車したいと考えています。


プロジェクトのキーマン
監理技術者U
このプロジェクトに
かけた想い
想像を超える震災による損傷
「まだ使えそうじゃないか」初めて現地入りし、被災した橋りょうの手前から対岸のトンネルに向けて伸びる2本の線路を見た感想です。 しかし、近づくにつれ、橋りょう中央部の隆起や部材の損傷・下部工躯体の亀裂を目にし、列車を通すことが叶わないことを理解しました。発注者である南阿蘇鉄道様をはじめ地元自治体、沿線地元住民の皆様の早期全線復旧に掛ける想いは大きく、何とか無事故無災害で工事を完了させ、皆様のご期待に応えたいとの思いでした。

当時の苦労
緻密な解析を繰り返して工事を完遂
架橋場所は両岸が切立った急傾斜地なうえ、左岸施工場所周辺は国の天然記念物に指定されており、作業スペースが狭隘で苦労しました。旧橋撤去の際は、国内に類を見ない未知の応力状態の橋りょうをケーブルクレーン直吊り工法で解体する為、一歩間違えると解体中の橋体の崩壊・倒壊を招き大規模な災害につながる可能性がある難度の高い工事でした。安全に撤去工事を行うため、設計グループと計画グループにて綿密な解体解析を行い、各部材に発生する応力度を算出。過度な応力が発生すれば張力調整により応力を低減させるなど対策を行いました。

完成を迎えて
橋梁マン人生にとって得難い経験
令和5年7月、南阿蘇鉄道全線運行再開のニュースを拝見し、地元の方々の喜ばれる姿に、自然災害の多い日本におけるインフラの重要性を再確認するとともに、その復旧作業に携わる会社に所属し復旧の一助になれたことに喜びを感じます。工事に携わった若手技術者は、得難い経験をするとともに今後の橋梁マン人生の糧となったことと思います。また、本工事にご協力頂いた協力会社の皆様が難工事に対し熱意ある姿勢で臨まれ、工期内に無事故無災害で工事を終えたことに対し感謝を申し上げます。
