風によって橋梁がどのように挙動するかを調べるのが橋梁の風洞実験の目的です。橋梁の設計で使用する荷重のうち、風荷重は、他の荷重と異なり、一意的に推定することができません。それは、橋梁の桁断面形状によって、風荷重が変化するためです。また、一度風により振動が起こると、更に振動を誘発する空気力も生じます。その力も、断面形状や、振動振幅によっても異なります。このように、風洞実験を行わないと、風による挙動は正確に推定することはできません。
日本の風洞技術は、世界最長の明石海峡大橋を始めとする本州四国連絡橋などの長大橋の設計のために,より再現性の高い技術が要求され,大学,公的機関,民間が協力して数多くの新しい風洞実験技術を開発し、世界トップレベルに成長しました。風洞実験を行う場合は、実際の大きさの橋梁を実験することはできないため、縮尺模型を用いて行います。また、風の気流も、一様流、乱流など様々な風を再現し、実験が行われます。
橋梁に作用する風の特性は、建設地点により様々であるため、その特性を予め検討することは合理的な耐風検討を行う上で重要な項目となります。
その検討手法は、建設地点と計画高さにより、机上にて検討する方法、数値流動解析により検討する方法のほか、地形模型を用いた地形模型風洞実験により定量的に検討する方法があります。
橋全体の挙動や、風の乱れの影響を定量的に調査するためには、全橋模型を用いた3次元風洞実験が必要となります。風洞実験において、縮尺模型の縮尺率が実験精度を左右します。一般に、縮尺率が大きいほど実験精度は落ちてきますが、実験設備が大きいとより実物に近いサイズで実験できるため、精度のいい実験結果を得ることができます。当社は、日本最大級の風洞実験設備を有する三菱重工業(株)の長崎の研究所のサポートを受け、より精度の高い3次元風洞実験を行うことができます。
大型風洞実験の模型を用いて、対策案を1つ1つ確認していては、時間もコストもかかってしまいます。そこで、耐風対策の目処付けを,「設計の初期段階に,あまり費用をかけずに素早く行う」風洞実験技術の開発が望まれるようになり、三菱重工業(株)の長崎の研究所にて、超小型模型でかつ、トータル精度を落とさず早く安く信頼性のある耐風検討を実現することが可能な簡易風洞実験ツール(S-VFD:Super-Visualized Fluid Dynamics)が開発されました。この簡易ツールでは,応答だけでなく断面周りの流れや静的空気力,変動空気力などの多くの情報を同時にビジュアル化して示すことにより,CFD(Computational Fluid Dynamics)や今までに蓄積した知的財産と組みあわせて様々な耐風性改善のアイディアや発想のひらめきを促し,開発を効率化することができます。