今﨑 昌人
いまさき まさと
建設部
今は、現場の第一線から退いているので、ちょっと変わった仕事をしています。現場を大きな目で見て、問題ないかをチェックし、悪いところがあれば、改善するような仕事をしています。現場といっても、大小様々ですが、今、自分が見ているのは、NEXCOなどの高速道路会社から受注した大規模工事です、大規模工事では、技術的な問題はもちろんですが、現場の採算性も、会社の方向性を左右するため、日々、気が抜けません。現場の運営は、基本的には、現場代理人と呼ばれる、「会社の社長の代理人」のような人に任されていますが、橋というのは、経験工学的な要素が多いため、自分がかつて携わった本四架橋(本州四国連絡橋架設工事)の経験も踏まえ、現場での問題点をいち早く察知し、アドバイスするようにしています。いわば、「お目付け役」としての立場で、大規模工事を推進しています。
ずいぶん昔の話になりますが、神戸で過ごした高校時代、大阪の「港大橋」というトラス橋の工事を目の当たりにしました。全長は980m、中央径間は日本最長の510mという、本当にばかでかい橋で、まさに恐竜を連想させるような橋でした。新聞でも報道されましたが、圧倒的な存在感に心を奪われ、自分も、いつか、このような大きな橋の仕事に携わりたいと思い、現在に至ります。
意外と思われるかもしれませんが、鉄でできた橋と言うのは、伸びたり、縮んだりするんです。長い橋は、一気にはつくれないので、橋桁をブロックにして、一つ一つ、ミリ単位で架設していきますが、最後の一つを架設する(専門用語で「閉合」する)際に、相手のブロックが伸び縮みして、なかなか合いません。太陽の動きに合わせて動く、「得体の知れない生き物」のようです。また、強風でも動くんです。明石海峡大橋は、道路幅が35m近くもありますが、風速が30mを超えると、風で15m近く動くため、どうにもなりません。橋というのは、鉄という硬い素材でできていながら、長くなると、その硬さを感じさせないくらい軟らかくなるというのが、長大橋の面白さかもしれません。
瀬戸大橋や明石海峡大橋の長大橋ばかり架設してきて、その都度、技術的な達成感や感動はありましたが、それにもまして感動したことがあります。高知の山奥に橋を架けたときのことです。橋を架ける前、ある集落は、ひとたび洪水などの災害が起きると、町と分断されてしまい、しばらくの間、援助物資が滞るよう状況に遭遇していました。特に、盲腸などの急病人が出ても、町の医者まで連れて行けないため、亡くなることも、しばしばあったそうです。そのため、橋が完成した時の地元の人たちの喜びようは、ものすごいものがありました。本当に感謝され、開通式の時は、会社ではなく、個人的に招かれ、高知の酒もたらふく飲ませてもらいました。自分たちの橋の技術が、こういう形で感謝されることに、驚きと感動がありました。
橋の魅力は、「人と人をつなぐ」こと。高知の山奥での感動を、仕事を通じて味わえること。MMBの魅力は、設計・工場・現場に一体感があること。設計は、工場製作や現場架設のことまで考えて設計するし、工場や現場も設計へのフィードバックを考える。たぶん、こういう一体感は他社にはないような気がするし、こういう一体感の中で仕事をすれば、視野の広い技術者になれると思います。
橋は、地域社会を支える重要な社会インフラです。目の前で、モノが出来上がっていく楽しさを味わえます。完成したときの洗練された美しさもあります。他の土木構造物とは、ここが決定的に異なります。このような橋の仕事に、一緒に携わりましょう。そして、人々から感謝され、自分も感動できる成功体験を、一緒に味わいましょう。